今までは、フロアジャッキを使用してサイドからジャッキアップしてタイヤ交換をしておりましたが、作業場所となるガレージの表面が凸凹で、フロアジャッキがスムーズに前進してくれないという課題がありました。そこで今回は、マサダ製作所の油圧シザースジャッキを購入してその課題を解決するとともに、その使用感や使用上の注意点などをまとめました。下記リンクにて動画も公開していますので、皆様のカーケアのご参考になれば嬉しいです。【車-カーケア】#23 車をサイド掛けでジャッキアップするなら油圧式のパンタグラフジャッキで!-マサダ製作所 油圧シザーズジャッキ DPJ-1000DX
目次
1.フロアジャッキによるジャッキアップ
私のカーケアでは、自分で出来るメンテナンス作業は出来るだけ自分で実施することにしています。当然ですが、作業が容易な 夏タイヤ ⇔ 冬タイヤ への交換なども自分で行います。
過去記事【車-カーケア】輸入車のタイヤ交換-ハブボルトとガイドバーでは、タイヤの取り付け構造が国産車と異なる輸入車(我が家はVW車)のタイヤ交換方法などを紹介しましたが、車体のジャッキアップには下記のフロアジャッキを使用していました。
実は、前輪・後輪それぞれを2本ずつ持ち上げてタイヤ交換するつもりで上記のジャッキを購入したのですが…我が家のVW車(ティグアンとゴルフ7)では、車高が低くてジャッキが車体の下に入りませんでした。そこで、止むなくサイドのジャッキアップポイントを使用して1本ずつジャッキアップして対応していました。
なお、フロアジャッキをサイド掛けで使用する際には下記のようなサイド掛け用のアダプターが必要になります。(私も追加で購入しました。)
2.フロアジャッキをサイド掛けする際の注意点
我が家のタイヤ交換では、サイドからフロアジャッキを掛けてジャッキアップしておりましたが、フロアジャッキをサイドから使用する際には、注意しなければならない点があります。
フロアジャッキは、構造上、車を持ち上げるバーの先端部分が円弧の軌道を描いて上昇していきます。(図の青矢印の軌道です。)
そのため、ジャッキのバーの先端が円弧の軌道を描くためには、フロアジャッキが車の下に潜りこむ方向(図の黄色矢印の方向)に前進していく必要があります。
よって、ジャッキアップする際に、フロアジャッキが前進しているのを確認することが、作業の安全性を確保するためには非常に重要です。
しかしながら…我が家の駐車場は、写真のとおり表面がかなり凸凹です。フロアジャッキのタイヤが上手く転がってくれないため、ジャッキが車の下方向に前進しにくいという問題が発生していました。
その状態を少しでも改善するために、フロアジャッキの下に薄いべニア板などを敷いて、出来るだけジャッキが前進するよう対策はしていたのですが…毎回、思うように前進してくれていないことを感じていました。
ちなみに、フロアジャッキが前進しないと何が起こるか?ですが、そのメカニズムは図のとおりです。
フロアジャッキが前進しないままでジャッキのバーが上昇すると、車にジャッキ側へ移動する力が加わります。結果、車が図の矢印方向にズレてくる可能性があるのです。
実際に我が家のタイヤ交換では、ジャッキアップともに、車が「ズズズッ!」と音を立ててじりじりと移動してくることが実感できました。嫁さんのゴルフ7では車両重量が軽いのでそれほど恐怖は感じませんが、それなりの車両重量があるティグアンでは、かなりの恐怖を感じます。
また、ジャッキが前進せずに、車側も動かない場合には、車のジャッキアップポイントに横方向の大きな力が加わることになります。かなり頑丈に作られている部分だとは思いますが、タイヤ交換で車を傷めてしまったら本末転倒です。
3.サイド掛けにはパンタグラフジャッキ?
通常、車にデフォルトで付属されているジャッキは、パンタグラフジャッキと呼ばれるものです。電車の屋根の上で電車に電気を供給するパンタグラフと同じような形状のジャッキですね。
パンタグラフジャッキが上昇する方向は、基本的には図のとおり真上方向のみです。当然ですが、ジャッキの本体位置が動くような構造にはなっていません。(本体位置が動いてはいけないジャッキです。)
したがって、ジャッキの上昇に伴って、車に横方向の力が加わることはほとんどありません。(厳密に言うと、車体のジャッキアップで車が傾く角度をθとした場合に、車幅×(1-cosθ)だけ車が横に動く必要がありますが…まあ、無視できるレベルでしょう。)
基本的に、表面が平滑でフロアジャッキが問題なく前進出来る場所であれば、フロアジャッキの方が作業性は良いと思います。しかしながら、我が家のように、表面が凸凹な場所でサイド掛けでのジャッキアップを行う場合は、構造的にパンタグラフジャッキの方が適していると言えそうです。
4.リフトが容易な油圧式パンタグラフジャッキ
車にデフォルトで付属されているパンタグラフジャッキは、写真のようにハンドルをグルグルと回転させてネジの力でジャッキアップするものが多いです。
インパクトドライバーなどを使用して作業している方もいらっしゃるようですが、ハンドルを手動で回転させてジャッキアップする作業は、少々大変です。
一方のフロアジャッキは、ハンドルを上下させるだけで、油圧の力でジャッキアップしてくれるものがほとんどなので作業性はとても良いです。私がフロアジャッキを購入したのもそういう理由からです。
であれば、パンタグラフジャッキもフロアジャッキのように作業性の良いものがあればベターですよね?実はそんな良いものが既にあるんです。それが下記のような「油圧式」パンタグラフジャッキです。
信頼の日本製。マサダ製作所さんの油圧シザーズジャッキです。(工場は、私の住む八王子のお隣、あきる野市にあるようです。)
こちらのシザーズジャッキ(パンタグラフジャッキ)は、フロアジャッキのように付属のハンドルを上下するだけで、油圧の力で簡単に車をジャッキアップ出来ます。パンタグラフジャッキの作業性の悪さを改善した、とても優れたパンタグラフジャッキですね。
マサダ製作所さんの油圧シザーズジャッキの商品ラインナップは下記の2種類です。
model | リフト能力 | 適合車両重量 |
DPJ-850DX | 850kg | 1500kg以下 |
DPJ-1000DX | 1000kg | 1800kg以下 |
リフト能力の違いで2種類の商品がラインナップされています。基本的には能力に余裕をもって作業した方が良いので、リフト能力が高い商品(DPJ-1000DX)を購入しておくのがベターですが…当然ながら、能力が高いほうが価格もお高いです。(笑)
我が家の場合、私のティグアンの車両重量が1500kg以上なので、DPJ-100DXを購入せざるを得ませんでしたが、「大は小を兼ねる」です。出来るだけDPJ-100DXを購入した方が良いでしょう。
なお、こちらのシザーズジャッキには専用の収納ケースが付いていてコンパクトに収納出来ますので、収納性はかなり良いです。(この辺りはフロアジャッキとは雲泥の差です。)
5.マサダ製作所 油圧シザーズジャッキの使用方法
マサダ製シザーズジャッキを使用したタイヤの交換方法はとても簡単です。(通常のパンタグラフジャッキと変わりません。)
まずは、車を平らなところに駐車し、ギアをパーキングに入れて、サイドブレーキ(電磁ブレーキ)を掛けます。更に、ジャッキアップするタイヤの対角線上のタイヤには輪止めをしておきます。
また、交換するタイヤのホイールナット(VWはボルト)は一旦緩めて、軽く締め直しておくと良いです。(固着したナット(ボルト)を、ジャッキアップ中に力を入れて弛めるのは怖いので。)
そして、シザーズジャッキのリリーステム(写真の黄色矢印部)をハンドル先端の溝を使用して締めて、ジャッキに油圧がかかる状態にします。(この時、リリーステムを必要以上に締め付けない方が良いです。理由は後ほど…)
続いて、車のジャッキアップポイントを探して、シザーズジャッキを上昇させながら、受金(写真の赤矢印部)の溝に合わせます。なお我が家のVW車では、深いほうの溝幅とジャッキアップポイントの幅が同じくらいだったので、浅いほうの溝を使用しました。
ジャッキが車にしっかり固定出来たら、ハンドルを上下させて車体を持ち上げていきます。やはり、ハンドルを回転させながらジャッキアップする普通のパンタグラフジャッキと比較すると、油圧式は圧倒的に作業性が良いです。(あっという間にジャッキアップできました。)
タイヤが浮く状態までリフトアップ出来たら、車体が下がってこないよう”ウマ”と呼ばれるジャッキスタンドで固定しておくのが正しい使用方法ですが…私の場合はそこまではしないことが多いです。万が一の場合に備えては、別のタイヤを車体の下に入れて作業します。(万が一車体が下がってきた場合には、敷いたタイヤは傷みますが、車への損傷は避けられます。)
タイヤが交換出来たら、ホイールナット(ボルト)を軽く締め、リリーステムを弛めて車体を下げていきます。この時に注意するポイントとしては、リリーステムを一気に弛め過ぎないことです。一気に弛めると車体が一気に下がって来て危険です。極めて優しく弛めてあげてください。
なお、ジャッキアップ前にリリーステムを締め付け過ぎていると、弛める時にも強い力が必要になります。その場合、リリーステムが一気に弛んでしまうリスクが高くなりますので、事前に適度に締め付けておくのが意外に重要です。
車体がしっかり下がってタイヤがしっかり接地出来たら、シザーズジャッキを外して、ホイールナット(ボルト)を既定のトルクで締め付けます。これでタイヤ交換は完了です。
私も今回初めて油圧式のシザーズジャッキを使用しましたが、作業性は本当に良いですね。車体が横にズレることもなくなり安心して作業することが出来ました。
6.油圧式シザーズジャッキの注意点
シザーズジャッキに限らず、油圧式のジャッキを使用する際の注意点は、作業中に車体が下がってこないよう、リリーステムをしっかり締めて油圧が抜けない状態で作業することです。そして、万が一、タイヤを外した状態で車体が下がってきても車が傷まないよう、ジャッキスタンドなどで固定して対策しておくことが重要になります。(私の場合はタイヤを車体の下に入れるだけですが…)
また、もう一つの注意点は、5項でも触れたとおり、車体を降ろす時にリリースリムを一気に緩め過ぎないことです。一気に弛めてしまうと、車体が勢いよく下がってきて危険なので、適度に優しく弛めてあげることが重要です。
そのためには、リリースリムを事前に強く締め付けないことが必要になりますが…締め付けが甘すぎると、今度は作業中に車体が下がって来るリスクが高くなります。何事も”ちょうど良い”を狙う必要があるということですね。
更に、シザーズジャッキ(パンタグラフジャッキ)は、必要以上に上昇させると本体が安定せずに倒れてしまう可能性があり危険です。よって、ジャッキを仕様上の限界高さ以上に上昇させないことが重要になります。
マサダ製作所のシザーズジャッキは受金の高さが「381mm」になる位置が上昇の限界高さに設定されていて、限界位置が近づくと写真のような「STOP LINE」が見えてくる仕様になっています。(写真の文字の下に赤いラインがあります。)
「STOP LINE」の文字が完全に露出して、ラインが少しでも見えてきたら、それ以上は上げない方が無難でしょう。
それと、畳んだ状態のシザーズジャッキの高さよりも車高が低い車では、車体の下にシザーズジャッキが入らないので使用できません。まあ、ジャッキを畳んだ時の最小高さは「121mm」なので、ほとんどの車では使用できるとは思いますが、車高を極端に下げている車では注意が必要ですね。
なお、嫁さんが乗っているVWゴルフⅦは、車高が比較的低い車になりますが、写真のとおり余裕で使用出来ました。この感じであれば、改造していない状態であれば、ほとんどの車に使用できるはずです。(このジャッキが使用出来ない車は踏切を気軽に渡れないレベルでしょう。)