毎日使用するリモコンなどでは、経年劣化で特定のボタンの反応が悪くなったりしますが、今回はそんなリモコンを分解してアルミテープで修理する方法を紹介します。修理自体はとても簡単ですので、リモコンの調子が悪くなったら、皆さんも是非トライしてみてください。
目次
1.経年劣化で動作し難くなるリモコン
テレビやDVD、エアコンや扇風機など、日常生活の中では様々なリモコンが使用されています。
しかしながら、リモコンを長年使用していると、押しても反応し難くなるボタンが出てきます。特に、毎日頻繁に使用するテレビのリモコンは、トラブルが発生することが多いです。(写真は我が家のREGZAのリモコンです)
トラブル事象として、リモコンのボタンが全て効かない場合は、リモコン内の基板が壊れていたりする場合が多いので、DIYで修理することは難しいですが、特定のボタンが効かない場合などでは、ボタンが接点不良になっているだけの場合が多いので、DIYで修理出来る可能性があります。
ただし、リモコンのボタン接点部(基板側)に写真のような「メンブレンスイッチ」と呼ばれるものが使用されている場合は、特定のボタンが効かなくなっている場合でも、DIYで修理することは難しいです。
メンブレンスイッチは、押すことで反転するドーム状のシートが基板に貼られているスイッチなので、接点はドームの内側にあります。よって、このスイッチが効かなくなった場合には、ダメになったドームを貼り換える必要があります。
ただ、メンブレンスイッチは高価格帯のリモコンなどに採用されているように、めったなことでは壊れることがない方式です。次項で説明する通常の接点よりもコストが高いため、テレビ用などの安価なリモコンには採用されませんが、個人的にはすべてのリモコンをメンブレンスイッチにしてくれればいいのにと常々思っています。(リモコンの原価が少しくらい上がっても、ユーザーの利益を優先すべきですよね。)
2.リモコンのボタン接点の構造や原理
さて、メンブレンスイッチ以外の通常のリモコンボタンは、経年劣化で接点不良となることが多いでが、接点不良となる原因を考えていく前に、リモコンのボタン接点の構造や原理を整理しましょう。
まずは、ボタンの接点構造ですが、一般的には基板側に写真のようなパターンが印刷されている場合が多いです。見た目的にはナスカの地上絵みたいなパターンですねw
このパターンは、よく見ると”上半分の櫛状のパターン”と”下半分の櫛状のパターン”が触れないように向かい合っています。このパターンどうしが導通することで、そのボタンのスイッチが入る(信号が飛ぶ)基板構成です。
一方、リモコンのボタンの裏側の押し子は、ゴム状の「黒色材料」になっていて、そこには、導電性のある塗料が塗られていたり、カーボンが練り込まれていたりします。(つまり、黒い部分に導電性があります。)
よって、ボタンの断面は図に表したとおりで、ボタンを押すと導電性のある押し子が基板上のパターンと接触して、離れていたパターンが導通することになります。
これがボタンが押すとスイッチが入る(機器本体に信号が飛ぶ)原理です。
構造的にはとても簡単な構造なので、コストメリットがあるのは納得ですね。(ただ、しつこいですが、個人的にはメンブレンスイッチを採用して欲しいw)
3.リモコンのボタンが接点不良になる原因
続いては、リモコンのボタン接点が経年劣化で効かなくなる理由を考えていきましょう。
ボタンを構成する要素は、「基板パターン」と「ボタンの押し子」ですので、それぞれに対して導通が妨げられる理由を考えていきます。
まず「基板パターン」については、パターン自体が経年劣化でダメになることは少ないです。問題を起こさせる原因としては、パターンに付着したゴミや汚れなどです。
パターン上にゴミや汚れが溜まると押し子が接触できなくなります。まあ、多少のゴミや汚れでも導通するようにパターンが櫛状の複雑な形状になっているのですが、毎日使用するリモコンの内部には、ボタンを押すことでのポンプ効果によって、空気と一緒にゴミが侵入していきますので、リモコン内部の基板は結構汚れていることが多いです。
続いて、「ボタンの押し子」が経年劣化でダメになる要因は、基板と何度も接触することで表面が摩耗したりして、押し子表面の銅線性塗料などが劣化し、表面の抵抗が高くなってしまうことです。
写真は分解した我が家のリモコンのボタンの裏側ですが、頻繁に使用するボタンの押し子は油分が浮いてテカテカになっています。リモコンの外部から油分が入るようには思えないので、押し子の表面に何らかの変化が起きているのでしょうね。
押し子の表面抵抗が高くなると、基板と接触してもパターンどうしが上手くつながらなくなるので、ボタンが効かなくなるという理屈です。
4.リモコンのボタン接点を復活させる方法
リモコンのボタン接点が劣化する原因は3項で整理しました。今度はボタン接点を復活させる具体的な方法についてまとめていきます。
4.1 リモコンを分解する
まずはリモコンを分解します。
ケースは表側と裏側に分かれていて、どこかにケースどうしを固定するネジが隠れていますので(我が家のリモコンはリモコン下部のスライドフラップの下に隠れていました:写真参照)そのネジを探して外します。
ネジを外したら、ケースどうしは嵌合ツメで固定されているだけになるので、ケースの境界に爪などの薄いものを入れて分離していきます。
この時、ケースがどうしても分離できないようなら、まだどこかにネジが隠れている可能性があります。無理矢理こじ開けたりせずに、もう一度ネジを探して外してください。(電池格納部など、見えない部分にネジが隠れている場合があります)
なお、分解時にケースを傷つけないためには、ケースの境界に挿しこむものがケースの材料よりも柔らかい必要があります。
私の場合は写真のようなギターのピックなどをケースの境界に挿入して開けるようにしています。(小型の電気製品を分解する時など、いろんな分解に使えて便利です。工場の修理ラインなどでも使われています。)
ケースが分離出来たら、表面側のケースに基板がネジ固定されているので、そのネジを外して基板を取り外します。
基板が取り外せたら、表面側のケースにボタンユニットが嵌っていますので、それを外せば分解は完了です。
4.2 基板を清掃する
分解が完了したら基板の表面を清掃して、基板上のゴミや汚れを除去します。
清掃には、アルコールなどを使用して清掃するのが良いですが、私の場合は、自動車部品のメンテナンスなどに使用するブレーキクリーナーなどのパーツクリーナーを使用して清掃しています。(アルコールと同様の効果があると思います)
なお、パーツクリーナーなどを使用する場合は、基板上に実装されている電気部品に出来るだけ溶剤がかからないようにして清掃した方が良いですね。(溶剤の噴射で壊れるような部品は実装されてないと思いますが念のため)
また、折角パーツを分解したので、ケースやボタンなども中性洗剤で水洗いしておくと気持ちがいいですね。(当たり前ですが、基板は水洗いしちゃダメです)
4.3 ボタン裏面の表面抵抗を確認する
基板(やケースなど)が清掃出来たら、次はボタン側をメンテナンスしていきますが、まずはボタン裏面の押し子の状態を確認します。
確認に使用するのは下記のようなテスタです。
テスタのプローブをボタンの押し子に当てて、押し子表面の抵抗値を確認していきます。
表面抵抗の数値は、リモコンの種類や状態などによって異なると思いますし、表面抵抗なので数値はあまり安定しませんが、動作に問題があるボタンとないボタンで数値に差が出ます。
我が家のリモコンの場合は、動作に問題がないボタンの抵抗値は、100kΩ以下の数値が出ましたが、動作に問題があるボタンでは、200~600kΩくらいの数値になっていました。
数値が大きかった部品は、最近効かなくなってきた「電源」ボタンと音量の「+」「-」のボタンと、チャンネルボタンの「4」、データボタンの「黄」などです。
「電源」と「+」「-」は頻繁に使うボタンなので納得ですが、「4」はそんなに押してるかなぁ?w「黄」も何で抵抗値が高くなっているのか?わかりませんが、傾向的にはリモコンの右側の列のボタンで数値が高い傾向になっていました。
4.4 ボタン裏面にアルミテープを貼る
ボタン裏面の押し子の表面抵抗が確認出来たら、数値が高かったボタンを修理していきます。
修理方法は、抵抗が高くなったボタン裏面にアルミテープを貼るというものです。使用するアルミテープは100均で購入できるものなどでOKです。抵抗値が高くなった押し子にアルミテープを貼って、高くなった接触抵抗を補っていきます。
具体的には、アルミテープを押し子の大きさに切り取って、ボタンの裏面(押し子)に貼っていくのですが、ハサミやカッターなどで切り取るよりも、写真のように穴あけパンチなどを使用して切り取ると簡単ですね。
アルミテープが切り取れたら、ボタンの押し子に貼っていきますが、基本的にアルミテープのゴムへの密着力は弱いので、押し子にしっかり押し付けて貼り付けていきます。
ボタンの裏面(押し子)にアルミテープを貼り付けたのが写真の状態になります。
ボタンの全面には貼れていませんが、ボタンの接点の原理は2項で説明した通りで、離れた2つの櫛状のパターンが電気的に導通出来ればよいので、穴あけパンチの大きさぐらいで十分導通はとれます。
なお、我が家のテレビのリモコンは、上下でボタンが2つに分かれていますので、写真にない下側ボタン(「黄」ボタン)にも同様の処置を行いました。
以上で、抵抗値が高くなったボタンの修理は完了です。
4.5 リモコンの組み立てと動作確認
全ての作業が完了したら、リモコンを元通りに組み立てていきます。
まずは、表側のケースにボタンを嵌め込んでいきます。
ボタンは基本的に一体型のゴム部品がベースになっていますが、写真のような「4方向ボタン」などの一部のボタンでは、ゴムの上にプラスチックキーが乗せられています。
プラスチックキーには方向性があることが多いので、その辺を確認しながら、元通りに組み立てていきます。
ケースにボタンを嵌めたら、基板をネジ固定し、裏側のケースを組み立ててネジ固定すれば組み立ては完了です。
組み立てが完了したら、動作確認して修理したボタンの反応が改善されているか?を確認します。反応が悪かった「電源」ボタン、音量の「+」及び「-」ボタンは、かなりサクサク動くようになりました。
リモコンの修理は比較的簡単です。特定のボタンの反応が悪くなった場合には、分解して修理しちゃいましょう!
また、リモコンが壊れて中古のリモコンをハードオフなどで購入した時も、今回紹介したような修理、及び清掃含めたメンテナンスを行うと、その後、気持ちよく使用できますよ。(私は中古で購入したリモコンには必ず清掃含めたメンテナンスを実施しています)