竹から作成する”竹炭”は、多数の微細孔を持つという特徴から、燃料として使用する以外にも様々な活用方法があります。今回は、そんな竹炭の特徴と使用効果、及び活用方法などをまとめるとともに、ペール缶を使用した「DIYで竹炭を作成する方法」をご紹介します。竹炭の作成は意外に簡単です。下記リンクにて動画も公開していますので、皆様のご参考になれば嬉しいです。【DIY】#37 ペール缶で竹炭を作ろう!-調湿・脱臭・浄水など幅広く活用できる竹炭の作り方
目次
1.放置された竹林を竹炭として活用する
木材から作成する”炭”はバーベキューなどでも使用する身近なものです。中でも”備長炭”と呼ばれる炭は、ウバメガシなどを原料として、最高級の炭と言われています。
一方で、竹から作成する”炭”は、”竹炭”と呼ばれています。”竹炭”の読み方は、「たけすみ」「ちくたん」どちらでも正しいようですが、改めて調べてみると多数派は「たけすみ」の方らしいです。私はずっと「ちくたん」と呼んでいましたが、確かに歯磨き粉は「たけすみ」だった気がしますね。
竹は重量が軽く、加工が容易なため、昔から様々な用途で使用され、日本人にはとても身近なものでした。田舎のおじいちゃん宅とかでも、敷地内に竹藪があって、春はタケノコ採りなんかをした記憶があるのではないでしょうか?
また、竹は非常に成長が早い植物なので、放っておくとどんどん増えていく植物です。以前はその成長と同じくらいの需要があり、いい感じで需要と供給のバランスが保たれてきましたが…最近では、より軽くて扱いやすいプラスチック製品が台頭し、竹の需要はかなり少なくなりました。その結果、各地で放置された竹林が林を侵食してしまうという問題が発生しています。
我が家の実家にも小さな竹藪がありますが、何にも使用されることがないため荒れ放題です。以前に伐採して保管されている竹も大量に存在している状況なので、折角なら、ただ伐採して燃やしてしまうだけではなく、有効に活用していきたいですね。
そこで今回は、有り余る竹を再生中の古民家の床下調湿材として有効活用すべく、”竹炭”の特徴や効果、活用方法などを整理して、実際に”竹炭”の自作にトライしたいと思います。
2.竹炭の特徴や効果、活用方法
まず”炭”は、木材などの有機物を蒸し焼きにより炭化させた可燃物です。かの有名な竈門炭次郎氏が町まで売りに行っていた商品ですね。
木材を酸素が少ないところで加熱すると、木材から二酸化炭素などがガスとなって揮発していきます。結果として残る炭素を主体とする物体が”炭”です。
また、炭には「黒炭」と「白炭」などの種類があり、我々がホームセンターで購入してBBQなどに使用するのは、木材からガスなどを揮発させただけの「黒炭」です。
一方で、うなぎのかば焼きや焼き鳥などを焼くのに使用され、最高級の炭と言われる”備長炭”などは「白炭」と呼ばれています。「白炭」は、木材を「黒炭」化させた後に、仕上げ作業として、再度高温で燃焼させ、残留していた不純物を焼き切ることで純度の高い炭に仕上げたものです。外観表面がうっすらと白く仕上がるため、「白炭」と呼ばれています。
竹炭は、見た目的にも分類的には「黒炭」になるでしょうか?その最大の特徴は、その中に非常に小さい”超微細孔”が多数存在することです。(写真の竹炭の断面を参照してください。)
竹炭に出来る超微細孔の半径は15–27nmほどと非常に小さく、その分だけ表面積が大きくなるため、空気中の湿度や臭気、水分中の不純物などを吸着する効果があります。よって竹炭は、燃料として使用されるよりも、その効果を利用して、他の用途に使用されることが多い炭になります。
竹炭を部屋に置いておくだけで、湿度が高いときはその湿気を”超微細孔”の中に吸着して湿度を下げ、湿度が低くなれば吸着した湿気を空気中に放出して湿度を調整してくれます。そして、部屋内の匂いを吸着してくれるという脱臭効果も期待できます。
また、水道水に入れれば塩素やカルキなどを吸着してくれる浄水効果が期待できますし、コーヒーを淹れる時にコーヒー豆に少量混ぜてドリップすれば、味や香りが長持ちするようになるようです。更にはお酒の水割りなどに入れれば味がまろやかになると言いますし、ご飯を炊くときに釜の中に放り込んでも効果があります。(この辺は、備長炭などと同じですね。)
そんな感じで、竹炭は燃やすだけではなく、非常に多くの活用方法があります。
3.竹炭の作り方-空き缶での作成方法
備長炭などの高級な炭は、1000℃以上の高温でガスなどの不純物を焼き切る必要があるため、作成するためには、写真のように窯内を高温に出来る炭窯などが必要です。しかしながら、竹炭はそれほど高温にしなくても作成することが出来るため、DIYでも比較的簡単に作成することが出来ます。
一番手軽に竹炭を作成する方法は”空き缶”を使用した作成方法です。空き缶に入るサイズの竹炭しか作成することができませんが、とても簡単に竹炭を作成することが出来ます。
空き缶を使用した竹炭の作成方法は下記です。
- 空き缶に竹を詰める
- 空き缶の開口をアルミホイルで密閉する
- 針金などでしっかり固定
- アルミホイルに穴を開ける
- 煙の出口を作る
- 空き缶を加熱する
- 煙が透明になるまで炭化させる
- 空き缶を冷まして竹炭を取り出す(完成)
空き缶に入るような少量の竹でも、煙の量はかなりの量になります。更に、竹から出る煙には竹酢液の成分が含まれているので、独特のにおいがします。(竹炭を作成する過程で出る煙から抽出されるのが竹酢液です。)よって、住宅地のお庭で竹炭を自作することは難しいですが、河原などに行けば、お手軽に竹炭が作成できるでしょう。
空き缶よりも更に大量の竹炭を作りたい場合は、一斗缶やペール缶、ドラム缶などを使用すれば、一度により大量の竹炭を作成することが出来ます。
4.ペール缶を使用した竹炭の作成方法
竹炭は空き缶などを使用して簡単に作成することが出来ますが、現在再生中の古民家には、床下に竹炭を敷いて調湿材・脱臭剤として利用することを検討中です。
空き缶での作成では竹炭の量が全く足りませんので、今回は使用済エンジンオイルのペール缶を使用して、竹炭を作成していきたいと思います。
4.1 竹炭作成に必要なものを準備する
ペール缶での竹炭作成に必要なものは下記です。
- 竹
- ペール缶
- ブロック-4個
- レンガ-4個
- 単管パイプ-1本(煙突用)
- 焼き網
- スコップや軍手など
ペール缶は使用済みエンジンオイルのものを使用し、焼き網は使用しなくなったBBQコンロのものを再利用します。その他に準備が必要なものはブロック、レンガ、単管パイプなどです。それらをホームセンターで買い揃え、上写真のとおりに準備しました。
4.2 竹炭を焼く炉を作成する
炭焼きに必要なものが準備出来たら、竹炭を焼くための炉を作成していきます。
炉を作成する場所をスコップで少し掘り込み、ブロック4個とレンガ4個を写真のように配置します。(土の上に設置することも出来ますが、最終工程でペール缶に被せる土が必要になるので、少し土を堀りこんで、被せる土を準備しておいた方がよいです。)
真ん中の十字の部分は、ペール缶の竹に着火させるための火種を燃焼させる場所になります。
レンガを設置した部分は、炭焼き中のペール缶に空気を送り込むための通気口になります。炭焼き中にレンガを外したり嵌めたりしながら、空気量を調整します。(上写真の右手前が炉の正面で、左奥が煙突を設置する側です。)
真ん中に載せている焼き網は、ペール缶の竹が火種部分に落下しないようにするものです。上写真では、構成がわかりやすくなるようにブロックの上に置いていますが、実際には竹の入ったペール缶を逆さにする際に、ペール缶の蓋として使用します。
続いて、ペール缶に単管パイプを固定する機構を作成しますが、炭焼きの最終工程では煙突を外す必要があります。ペール缶の上下にワイヤーを2本巻き付け、それぞれにパイプを挿入する輪っかを作って、簡易的に固定出来る構造としました。(写真を参照してください)
なお、写真では煙突となる単管パイプがレンガの上に乗ってしまっていますが、炭焼き中にはペール缶下の(火種の)空間と煙突がつながっている必要があります。煙突とレンガは重ならない位置に配置してください。
4.3 ペール缶に竹を詰め込む
炉の準備が出来たらペール缶に竹を詰め込んでいきます。
竹をペール缶と同じ長さにカットし、それを縦に半分、もしくは4個くらいに分割していきます。(直径が小さい部分は、そのまま使用してもいい感じの竹炭が出来ます。)
なお、竹の分割には鉈(なた)を使用しますが、キャンプ用に購入した斧(おの:写真参照)がしばらく使用されずに眠っていたのでので、今回はそちらを使用してみました。結論として、竹の分割に関しては、鉈の方が扱いやすいですね。(刃の厚みとのバランスにおいて、鉈の方がより優れていると感じました。)
竹の加工が出来たら、ペール缶の中に隙間なく詰め込んでいきます。
ペール缶くらいの大きさであれば、満杯にするのは簡単だろうと思って作業を開始しましたが…容量が以外に大きく、かなりの竹を切断分割しました。
ペール缶に竹を詰め込むことが出来たら、焼き網で蓋をし、ひっくり返して炉に設置します。
最後に、ペール缶に煙突となる単管パイプをセットすれば炭焼きの準備は完了です。
4.4 ペール缶の中の竹を着火させる
炭焼きの準備が完了したら、すべてのレンガを外して(ペール缶の下部に十分な空気が送り込める状態にして)火種部分に着火していきます。
火種からペール缶の中の竹に着火すると大量の煙が出ます。大量の煙が出るまで、うちわで仰ぐなどして空気を送り込み、ペール缶の中の竹にもしっかり着火させます。
状況にもよりますが、火種を10分~15分程度しっかり燃焼させることが出来れば、中の竹も十分に着火出来ると思います。
煙が大量に出てきて、ペール缶の中の竹が十分に着火したことが確認できたら、手前側以外の3方向にレンガを嵌め込んで土を被せます。
3方向の空気穴を塞ぐことで、手前側から空気を送り込んで、奥側の煙突から空気が排出されるという1本の空気経路が出来上がります。写真では手前側にも逆流してくる煙が多少発生していますが、基本的には、空気経路を1本に集約することで、ロケットストーブ的な感じで高温燃焼するようになるのだと思われます。(多分)
ペール缶の中の竹が十分に着火出来ていれば、写真のように煙突からは白い煙が大量に出ます。(竹酢液のツンとする匂いがします。)
このままの状態で1時間~2時間放置し、ペール缶の中の竹を燃焼させて炭化させます。
なお、竹の炭化が進んで、煙が透明になったら十分な炭化が出来た合図です。そうなるまでこのまましっかり燃焼させましょう。
このまま煙突を眺めながらビールを飲むのも気持ちが良さそうですが、今回は他にもやることがてんこ盛りです。たまに煙の色を確認しながら、放置しました。
4.5 炭化した竹に残留した不純物を焼き切る
煙突から出る煙が写真のように透明になったら、竹の炭化が概ね完了した合図です。(あまりに透明になったので、火が消えてしまったのではないかと心配になりましたが、結果としては問題なかったみたいです。)
このまま、炭焼きを完了しても良いのですが、より質のよい竹炭にするためには、もうひと手間かけた方が良いようです。
周りに被せた土を取り除き、3方向のレンガを取り外して、ペール缶の中に再度十分な空気を送り込みます。
そうすると、ペール缶の中が再び燃焼し、また白い煙が出てくるようになります。それが炭化せずに残留した不純物が燃えている状態なのだそうです。より純度の高い竹炭になるよう、ペール缶の中の温度を再度上昇させて、残留した不純物をしっかり焼き切ります。
ただし、ここで余り火を入れすぎると、炭化した炭が燃えて灰になってしまうので、再燃焼の時間は10分~15分くらいです。(炭焼き初心者の私は少し短めの10分としました。)
不純物の焼き切りが完了した(と判断した)ら、今度は4方向のレンガを全て嵌め込んで煙突を取り外し、空気の供給を完全にストップさせます。
そして、最後に写真のようにペール缶全体に土を被せれば、炭焼きの工程はすべて完了です。このまま一晩放置して、十分に炭化させるとともに、作成した竹炭をゆっくり冷やします。
土を被せる目的は、ペール缶内の保温です。土をしっかり被せることで、ペール缶の中がより長く高温を維持できるようになり、更にしっかりと炭化が出来るようになります。
5.ペール缶で作成した竹炭の取り出し
炭焼きしたペール缶を一晩放置し、十分に冷えたことが確認出来たら、土を取り除いてペール缶を掘り出していきます。(中の竹炭が落ちないよう、焼き網をしっかり固定しながら、ペール缶をひっくり返します。)
さて、今回は初めての竹炭作成になりますが、ちゃんと竹炭は出来ているでしょうか?(初めての確認は結構ドキドキしますね。)
ペール缶から取り出した竹炭は写真のとおりです。ところどころ炭化が不十分なところはありますが、大部分はしっかり炭化できているように見えます。
質のよい竹炭は、備長炭と同様に、叩くと金属音がするようですが…流石にそのような状態には程遠いようです。(笑)
ただ、竹炭どうしが擦れあうと、結構高めの音がするようには仕上がっていますので、しっかり”竹炭”になっていると思われます。(初めてでも、しっかり竹炭が作成できました。)
6.竹炭の炭化状態の確認と活用
最後に、完成した竹炭の中から、しっかり炭化したものと、炭化が不十分だと思われるものを仕分けしていきます。
しっかり炭化しているものは、力を加えると気持ちよく”パキッ”っと割れてくれますが、炭化が不十分なものは、縦方向に竹の繊維が残っていて、力を入れても簡単には割れてくれません。(メキメキっと折れる感じで、筋張った繊維が出てくる感じになります。)
よって、まずは外観で炭化状態を判断し、外観での判断が難しいものは軽く割ってその状態を判断しました。
また、全体的な炭化が不十分なものでも、先端だけが部分的に炭化できていたりするものもあるようです。そのようなものを捨ててしまうのは勿体ないので、後日、炭化が不十分だと判断したものから炭化している部分だけを取り出し、自宅のトイレや洗面所に設置しました。(写真参照)
こんな小さな竹炭を少量置いただけで、どれだけの効果があるか?はわかりませんが、和のお皿に載せるだけで浄化されたような気持ちになるのは私だけではないはずです。(笑)
今回作成した竹炭のほとんどは、再生中の実家の床下に敷いていく予定ですが、今後はその他の活用方法もいろいろと考えていきたいと思います。DIYでの竹炭作成は、控えめに言っておススメですよ。