過去記事【情報】ビールの定義-発泡酒や第3のビール(新ジャンル)との違いでは、ビールと発泡酒、そして第3のビール(新ジャンル)の違いをまとめました。今回は「下面発酵ビール(ラガービール)」や「上面発酵ビール(エールビール)」などの、発酵ビール酵母や醸造方法の違いによるビールの種類をまとめてみました。ビールに関する知識を更に深めて、ビールをより愉しんでいきましょう。
目次
1.ビールにも様々なバリエーションがある
過去記事【情報】ビールの定義-発泡酒や第3のビール(新ジャンル)との違いでは、ビールと発泡酒、そして第3のビール(新ジャンル)との違いをまとめました。
その中で、ビールは元々麦芽100%で作られることが多かったが、様々な理由から副原料が加えられることが多くなったこと、そして発泡酒は、麦芽50%未満で作られたなんちゃってビールであること、そして第3のビールに至っては、麦芽を基に作られていないので、そもそもビールと呼ぶべきお酒ではないことなどがわかりました。
一方でドイツでは、ビールの品質確保を目的として、麦芽100%以外のビールを作ることが法律で禁止されているんだそうです。個人的には、日本も麦芽100%のみをビールと呼ぶことにして、それ以外は違う呼称で呼ぶなどの区別をして欲しいと願う今日この頃です。(私はやっぱり。ビールは麦芽100%がいいです。)
さて、そんな副材料の添加でバリエーションが増えたビールの中にも、使用するビール酵母やその醸造方法などにより様々な種類があります。今回は、そのビール種類を改めてまとめて、愛して止まないビールに対する理解を更に深めていきたいと思います。
2.下面発酵ビール(ラガービール)
まずは下面発酵ビールと呼ばれるビールです。
10度前後で発酵できる酵母を使用していて、ビールの製造工程で発酵した酵母が沈んでいくことから下面発酵ビールと呼ばれています。
熟成期間は約1ヶ月と長いですが、低温で発酵させるため雑菌が繁殖しにくく、大量生産に向いていることから、現在は世界のビールの主流になっています。
また、日本で良く聞く「ラガービール」は下面発酵ビールのことを指しており、日本のビールはこちらに分類されるものが大半のようです。
そんな下面発酵ビール(ラガービール)のバリエーションは下記のとおりです。
2.1 ピルスナー
チェコのピルゼンで生まれたホップの効いた淡色ビールです。世界で最も普及しているビールで、日本のビールもそのほとんどがこちらに分類されます。
ピルスナーが普及する前は、濃褐色のビールが主流だったこともあり、ピルスナーが登場した時には「黄金のビール」として評判になりました。
軟水との相性が良く、口当たりがさわやかで喉ごしよく飲めるので、夏は高温多湿となる日本の風土に合った日本人向きのビールいえます。
2.2 ドルトムンダー
ドイツのドルトムント地方で生まれた淡色ビールです。苦味は比較的弱いですが、発酵度が高く日持ちがよいのが特徴です。
その日持ちの良さから、輸出されるビールの先駆的な役割を担いました。エキスポートと呼ばれるビールはこのタイプのビールを指します。
2.3 ボック
ドイツのアインベック地方で生まれ、その後バイエルン地方で発展したビールです。元々は濃色ビールだったのですが、今は淡色のものが多くなっているようです。
ホップの香りが高く、コクがあるのが特徴で、アルコール濃度も比較的高く、6.0~6.5%ほどあります。
そのアルコール濃度をさらに高くして、7.5~13.0%にしたものは、ドッペルボックと呼ばれています。
2.4 アメリカビール
アメリカで発展した軽めのビールです。
とうもろこし等の副原料を多量に用いることでホップの苦味が低く、炭酸ガスの含有量が高いことで清涼感が強いのが特徴です。
カナダ、中南米のビールはほとんどがこのタイプに分類されます。
2.5 ライト
アメリカで発展した淡色ビールです。
麦汁濃度を下げて発酵度を高めることで残存する糖分を少なくし、カロリーを2/3~1/2に下げたビールです。アルコール濃度もちょっと低めの2.8~4.3%です。
3.上面発酵ビール(エールビール)
続いては、エールビールと呼ばれる上面発酵ビールです。
発酵温度が約15℃から25℃と高い酵母が使用されていて、ビールの製造工程で発酵した酵母が上面に浮き上がっていくことから上面発酵ビールと呼ばれています。
熟成期間は約2週間と短く、イギリスで1500年以上も前に生まれた現代ビールの元祖的存在です。
上面発酵のエール酵母は、下面発酵のラガー酵母に比べて香り成分をとても多く含んでいるため、ビールとは思えないほどの豊かな香りが楽しめます。
そんな上面発酵ビール(エールビール)のバリエーションは下記のとおりです。
3.1 エール
エールビールというと、エール酵母を使用した上面発酵ビール全体を指すようになりましたが、元々はエール酵母を使用したイギリスビールを指し、その種類は下記のとおり多岐にわたっています。
- ペールエール:淡色でホップの香りが効いたビール
- マイルドエール:中濃色でホップの香りを抑え麦芽の香りを出したビール
- ブラウンエール:濃い色が特徴のビール
- エキスポートエール:濃厚さが特徴のビール
- ビターエール:ホップの苦みが効いたビール
- スコッチエール:スコットランドの濃色濃厚のビール
3.2 アルト
ドイツのデュッセルドルフ地方で生まれた濃色ビールです。
ホップの香りが効いているのが特徴で、イギリスのエールに似ているビールです。
3.3 ケルシュ
ドイツのケルン地方特産の淡色ビールです。
製法やホップの香りなどがアルトに似ていますが、淡色麦芽を用いているので見た目が淡色になっています。
3.4 バイツェン
ドイツのバイエルン地方の淡色ビールです。淡色のものが多いですが、一部濃色のものもあるようです。
ドイツ語でバイツェンと呼ばれる小麦麦芽を50%以上使用しているため、苦味がたいへん弱くて、炭酸ガス含量が高く、清涼感があるのが特徴です。
3.5 トラピスト
ベルギーに伝わる濃色ビールです。
イギリス産のエールに似たビールで、アルコール濃度はちょっと高めの6.0~10.0%です。
3.6 ポーター
ロンドンで生まれた濃色ビールです。
濃厚でホップの苦味が強いのが特徴ですが、後述のスタウトが普及すると急激に衰退しました。アルコール濃度は少しだけ高めの5.0~7.5%です。
3.7 スタウト
イギリスで生まれた濃色ビールです。
原料に砂糖の使用が許可されたことで、ポーターの製法で原料の一部に砂糖を用いてつくられたビールです。アイルランドのギネスなどが有名です。
4.自然発酵ビール
最後は、自然発酵ビールです。
培養されたビール酵母を使用せずに、空気中に浮遊している酵母やバクテリアで、1~2年、またはそれ以上自然発酵させたビールです。(ちょっと異質な感じがしますね。)
4.1 ランビック
ベルギーのブリュッセル地方で作られるビールです。
大麦麦芽のほかに小麦麦芽が使用されているビールで、ホップにはわざわざ古いものを使用します。
特有の香りがあって酸味が強いので、他のビールで割ったり甘味料を加えたりして飲むのが一般的です。
4.2 グーズ
ベルギーのランビックの亜種的なビールです。
完成したランビックを1/3と、1年程度自然発酵させた若いランビックを2/3混ぜて、更に1年間発酵後に瓶詰めし、瓶の中でさらに発酵させたものです。発泡性がとても強くシャンパンのような風味があります。
・ビールの醸造方法と種類をお勉強して
元々、ビールの中にラガービールとかエールビールとかの分類があるのは認識していて、それぞれの味や香りの特徴などはなんとなく理解していましたが、今回はその区分けがしっかり認識できました。
また、日本のビールがピルスナー分類されるのは意外でしたね。(ピルスナーはラガーとは別のものだと思っていました。)
日本で主流のピルスナーは、元来はポップが効いていて香りが強いビールのはずですが…過去記事【情報】ビールの定義-発泡酒や第3のビール(新ジャンル)との違いで記事にしたように、副原料が加えられて麦芽比率が低くなることで、おとなしい仕上がりになってしまっているということですね。
そして、その副原料を加える流れを作ったのは、どうやらアメリカのようです。なにもそんなところまでマネしなくてもいいのに…
ドイツやベルギーなどのヨーロッパには、私の飲んだことのない美味しいビールが、まだまだたくさんありそうです。輸入ビールとして購入して飲んでもいいですが、いつか現地に行って、常温でガブガブ飲んでみたいですね。(笑)