【検証】マンガン・アルカリ乾電池と充電池の公称電圧はなぜ違うの?

乾電池と充電池の公称電圧が違うのに同一機器に使用できる理由は?

通常の使い捨ての乾電池と充電池では表示されている公称電圧が異なります。同じ用途で使用する前提の電池で公称電圧が違うのはなぜなのでしょうか?そして、電圧が異なるのにどうして同一機器に使用することが出来るのでしょうか?今回は、それぞれの電池の仕様や電圧(降下)特性などを比較して、それらの疑問を解決しました。皆様のご参考になれば嬉しいです。

1.乾電池と充電池では電圧仕様が違う?

以前の記事【検証】ニッケル水素電池用の古い充電器の動作と互換性を確認するでは、引出しから出てきた古い充電器が問題なく使用できるか?検証しましたが、その検証の中では、公称電圧が1.2Vの充電池(リチウム水素電池)が満充電では1.45Vを示すなど、電池の電圧仕様に関しては、よくわからない部分がいくつかありました。

また、通常の使い捨ての乾電池(マンガン乾電池・アルカリ乾電池)の公称電圧は1.5Vですが、1.5Vの乾電池を使用するよう指定されている機器に、公称電圧1.2Vの充電池が使用出来るのは、なぜなのでしょうか?

今回は、それぞれの電池の仕様、及び電圧(降下)特性などを明確にして、それらの疑問を解決していきます。

2.マンガン乾電池の仕様や特徴

マンガン乾電池は、電極に「二酸化マンガン」と「亜鉛」、電解液に「塩化亜鉛水溶液」を使用する乾電池です。

公称電圧は1.5Vでアルカリ乾電池と同じですが、そのパワーや容量などがアルカリ電池と比較すると劣ります。

しかしながら、電池を休ませると電圧が回復するという特徴を持っていますので、小電力でたまに稼働する機器(リモコンなど)により適した乾電池になるようです。(これは知りませんでしたね。次回からリモコンにはより安価なマンガン乾電池を購入したいと思います。)

3.アルカリ乾電池の仕様や特徴

アルカリ乾電池は、電極が「二酸化マンガン」と「亜鉛」でマンガン乾電池と共通ですが、電解液にアルカリ性の「水酸化カリウム」を使用する乾電池です。

公称電圧は1.5Vでマンガン電池と同じですが、二酸化マンガンや亜鉛の使用量が多く、瞬間的なパワーと容量が、マンガン乾電池と比較すると2~5倍ほど大きいです。

よって、アルカリ乾電池は、瞬間的なパワーや持続(時間)が必要な機器に適した乾電池になりますね。(こちらはイメージ通りでした。)

4.ニッケル水素充電池の仕様や特徴

ニッケル水素充電池は、電極に「ニッケル酸化化合物」と「水素化合物」が使われており、電解液にはアルカリ乾電池と同じアルカリ性の「水酸化カリウム」が使用されている電池です。

公称電圧は1.2Vで、マンガン・アルカリ乾電池と比較すると▲0.3Vになります。

マンガン・アルカリ乾電池との最大の違いは、充電することで繰り返し使用できることです。容量については電池のサイズごとに様々な容量のものが存在しています。

5.マンガン・アルカリ乾電池と充電池の電圧降下

では、公称電圧が1.5Vのマンガン・アルカリ乾電池と、公称電圧が1.2Vの充電池(ニッケル水素)が、同じ機器に使用できるのはどういう理屈からでしょうか?

まずは、マンガン・アルカリ電池の使用による電圧降下特性(放電曲線)を確認してみましょう。

    出典元:Panasonic HP

図は一般的なマンガン・アルカリ乾電池の、使用(放電)時間と電圧の関係を表したグラフになります。

まず、マンガン・アルカリ電池の公称電圧は1.5Vですが、満充電の状態では1.6V以上あることがわかります。

そして、その電圧は使用(放電)とともにどんどん降下し、実際に1.5Vの電圧になるのはグラフ上ではほんの一瞬です。(これで公称電圧が1.5Vなのには、すごく違和感がありますね。)

で、ここで重要なのは、乾電池を使用する機器が、電圧が0.9V(グラフ上の横線位置)になるまで動作するよう設計されているという事実です。(これも全く知りませんでしたね。。。)

そのため、マンガン・アルカリ乾電池の電圧はあっという間に公称電圧の1.5Vに満たない状態になってしまいますが、「放電終止電圧」と呼ばれる0.9Vに電圧が降下するまでは機器を動作させることができます。

それに対して、ニッケル水素充電池はどういった電圧降下特性を持っているのでしょうか?

     出典元:Panasonic HP

図は一般的なマンガン・アルカリ乾電池と、ニッケル水素充電池の使用(放電)時間と電圧の降下を比較したグラフになります。

まず、満充電状態での電圧は1.5V程度になることがわかります。(過去記事で満充電状態での測定結果が1.45Vだった事実と合致しますね。)

そして、一般的な乾電池の電圧が時間経過とともに単調減少していくのに対して、充電池は1.2V付近である程度電圧が安定することが読み取れます。

乾電池の公称電圧が1.5Vであることにはかなりの違和感を感じましたが、充電池の公称電圧が1.2Vであることについては納得がいく特性になっていますね。

そして、前述のとおり使用機器は「放電終止電圧」である0.9Vまで使用できるという事実により、乾電池と充電池は同様の機器に問題なく使用できるということになります。(状況を理論的に理解できてすっきりしました。)

今回は、乾電池についてお勉強し、色々な事実を知ることが出来ました。取り急ぎは、次回のリモコン用電池にはマンガン電池を使用してみます!(笑)

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