3月も中旬となり、暖かい日も増えてきました。我が家の芝生もそろそろ「春の更新作業」の時期です。そこで今回は、我が家の芝生に毎年行っている「春の更新作業」についてまとめてみました。芝刈り・サッチング・目土入れの3コンボをしっかり行うことが、今シーズン芝生がしっかり成長するための下地となります。長年放置した芝生に対して初めに実施するお手入れもほぼ同じです。下記リンクにて動画も公開していますので、是非ご参考にしてみてください。【芝生】冬越しした芝生に対する春の更新作業
目次
1.芝生の冬越しと春の更新作業
「隣の芝生は青く見える」などという言葉がありますが、美しい芝生を維持することは、持ち家を持つすべての国民にとってのステータスです。(激しい偏見すいませんww)
美しい芝生を作るためには、芝刈りなどの日々の育成作業が重要になりますが、個人的には、芝生をしっかり冬越しさせること、及び、春の更新作業をしっかり実施することがとても重要だと思っています。
日本のお庭で最も植えられている芝は「高麗芝」ですが、高麗芝に最適な生育温度は23℃~35℃です。耐寒性はそれほど高くないと言われていますので、気温が10℃を下回ると生育が止まり、更に低くなると地上の葉が枯れたように茶色くなりますが、地面が凍るような過酷な環境でなければ、地中の根がしっかり生き続けてくれます。よって、一般的な日本の芝生は、特別な処置をしなくても問題なく冬越し出来ると言われています。
しかしながら、寒冷地での芝生の冬越しでは、多少の配慮が必要だと考えています。我が家は東京では寒冷地と言われる(雪が降るとテレビの中継が来る)八王子です。霜が降りるような寒い日もありますので、配慮が必要です。
我が家の芝生育成では、葉の成長が止まる前の9月後半くらいには芝刈りをやめて、葉がある程度長い状態で冬越しさせるようにしています。(写真は葉が伸びた状態で冬越しさせた我が家の芝生です。)
そうすることで、どんな効果が生まれるかというと…茶色くなった葉が冬の間も地表を覆い、冬越しする地中の芝生の「お布団」となって、冬のダメージを軽減してくれます。稲わらで地表を覆って作物の根を守るのと似たような考え方ですので、寒冷地でなくても是非、実施すべき冬越し対策だと思っています。
しかしながら、枯れた葉をそのまま放置してしまうと、翌年の芝生の成長を阻害してしまいますので、葉の伸びた状態で冬越し行った場合は、冬の間にお布団になった枯れた葉をしっかり取り除く「春の更新作業」が重要になります。
そこで今回は、我が家で実施している「春の更新作業」についてまとめてみました。この「春の更新作業」は、今まで育成せずに放置してきた芝生に対して、まず最初に行う作業とほぼ同じになります。放置していた芝生の育成をこれから始める芝生初心者の方にも参考にしてもらえると嬉しいです。
2.芝生の伸びた葉を刈る-芝刈り
我が家の芝生育成における「春の更新作業」で、まず最初に実施するのは、伸びた状態で冬越しした葉の「芝刈り」です。(リンク先は過去にまとめた記事です)
前述のとおり、芝生は冬の間は地上の葉を枯らし、地中で息を潜めて冬越ししますが、庭の中でも日当たりの良い場所の生育状態の良い芝生などは、葉が完全には枯れない状態で冬越しします。そこでまずは、枯れずに冬越しした芝生を刈り込んでいきます。
我が家の芝生で言うと、リビングからお庭に出るステップのすぐ下辺り(写真の四角囲みエリア)の芝生になりますね。
このエリアは陽当たりが良く、人に踏まれることも少ないため芝生がモリモリ育ちます。冬の間も芝生が多少の緑色を残したまま、直立した状態で冬越ししますので、まずは、このエリアの芝刈りを実施していきます。
なお、私が芝刈りに使用しているのは下記の電動バリカン、リョービ製”AB-1620”です。キンボシの手押し式芝刈り機などを購入しようと考えた時期もありますが、意外と使い勝手が良かったりするので、そのまま使い続けています。
ただし、上記の電動バリカンだけでは、終止しゃがんだ状態での作業になってしまうので、下記のポール&スライダーを併用して、立ち作業で芝刈りを行っています。
基本的に芝生は、春になると新しい芽を出してくれる植物です。煙が気にならない田舎では、野焼きを実施するくらいなので、根を痛める作業さえしなければ、前年の葉は全て不要です。
よって「春の更新作業」では”軸刈り上等!”(後述します)で、かなり短く刈り込んでしまって問題ないと考えていますので、電動バリカンの設定を最低刈り高さ(15mm)に設定して刈り込んでいきます。
電動バリカンで芝をしっかり刈るポイントとしては、芝の逆目となる方向から刈りこむことですね。
葉が倒れている方向に向かって電動バリカンの刃を入れても、葉が逃げてしまうだけでほとんど刈れません。葉が倒れている方向から刃を入れて、葉を”起き上がらせながら”刈り込むことが重要です。
よって、刈り込む芝生に対して、4方向から刃を入れるのがBESTですが、それだと時間がかかり過ぎてしまうので、倒れている方向からを含めた最低2方向から刃を入れるのが基本になると思います。
また、電動バリカンの刃を斜め方向に入れてしまうと、刃が土に刺さって根を痛めてしまいます。刃が出来るだけ地面と水平になるようスライドさせて刈っていきます。
ただ、葉先が逃げてしまってなかなか刈れない葉に対しては、あえて電動バリカンの刃を斜めに入れて刈ることもあります。その辺は、実際にやってみて、臨機応変に対応していく感じですね。
写真はステップ下エリアの芝生の、芝刈り後の状態です。色々な方向から電動バリカンの刃を入れることにより、短く芝刈りすることが出来ました。
通常の芝刈りでは、刈り込むのは葉全体の1/3以内として、根元の緑色でない部分が露出する状態(”軸刈り”状態と呼びます)にしないのが鉄則ですが、「春の更新作業」に関しては、”軸刈り上等”でしっかり刈りこみ、新芽の成長を促します。
また、壁際などは電動バリカンだけでは刈れませんので、刈り残しを剪定ばさみなどを用いて手作業で刈り込んでいきます。(芝刈りについては、過去記事【芝生】芝生のケアを考察① 芝刈り-目的・効果・おすすめ芝刈り機でも詳しくまとめていますので、ご参考にしてみてください。)
3.芝生の枯れた葉を除去する-サッチング
続いては、芝生が枯れた状態で冬越ししたエリアの処置です。まずは、冬の間に芝生の「お布団」になっていた枯れた芝生(サッチ)を除去するサッチングを実施していきます。
この熊手のような道具で芝生を掻いて、地表を覆う枯れた葉を除去していきます。
枯れた芝生をレーキで掻いてみると、「こんなに隠れていたの?」と驚くくらい、枯れた葉(サッチ)が取り出せます。(写真参照)
なお、春の更新時期だけでなく、育成を怠っていた放置芝生にもたくさんのサッチが溜まっています。サッチが溜まった状態では、芝の新芽が出て来れなくなってしまうので、溜まったサッチを除去する”サッチング”作業は、放置していた芝生にも非常に有効な作業となります。
ただ、サッチは枯れた芝生、つまり有機物ですので、それらが微生物などに分解されれば芝生が育成する肥料にもなり得ます。その辺りは過去記事【芝生】芝生の考察⑤サッチング-必要性と効果、適切な実施頻度は?でまとめていますので、興味がある方はご参考にしていただければと思いますが、基本的な考え方として、適度なサッチは肥料になりますが、過度に溜まり過ぎたサッチはサッチングで除去しないと分解が追い付きません。よって、春の更新作業や、放置芝生のサッチはサッチングで取り除くのが必須となります。
また、サッチングでは土の中に潜んでいる「ヨトウムシ」などの害虫も駆除できます。(写真はサッチングで土の中から掻き出されたヨトウムシです。)
我が家の芝生では、気温が上昇すれば、ニホントカゲ達がパトロールして退治してくれますが、それまでの春の間は、サッチングで駆除します。
なお、サッチングは簡単な作業に見えますが意外に大変な作業です。(一番嫌いな作業だという芝生愛好家もいます。)しゃがんだ姿勢がちょっと辛いので、雑な作業になりがちですが、あまり乱暴に作業してしまうと、芝生の根を痛めてしまうこともあるので、適度な力加減で作業することが重要ですね。
4.サッチングで起こした葉を芝刈りする
続いては、枯れた状態で冬越ししたエリアのサッチング後の処理です。サッチングで枯れた葉が取り除かれると、枯れずに残っていた生きている葉が残りますので、今度はその葉を芝刈りしていきます。
図がここで行う芝刈り作業を簡単に図示したものです。
冬の間に葉を伸ばしたまま枯れた葉は、図のように折り重なって冬越ししますので、そのままでは刈り込むことができません。
そこで、まずはサッチングによって枯れた葉(サッチ)を取り除くことで、枯れずに残っていた葉を起き上がらせます。(葉の間にレーキを入れることで、寝ていた葉を起き上がらせることが出来ます。)
その状態で優しく芝刈りすることで、辛うじて残っていた葉を刈り込むことが出来るようになります。
長年放置していた芝生についても同様です。放置芝生は、葉が伸び放題になって互いに折り重なります。場合によっては、それが何世代にもわたって折り重なる状態になりますので、まずはサッチングで溜まったサッチを除去して、葉を起こした状態で芝刈りしてあげることが重要となります。
5.刈り込んだ芝の間に目土を入れる
続いては、刈り込んだ芝生の根元に目土を入れていきます。
芝生の育成における「目土入れ」は、図のように芝生の葉と葉の間に細かい土を入れていく作業です。
「目土入れ」の作業の目的、効果は様々です。詳細は過去記事【芝生】芝生のケアを考察② 目土-使用目的や方法、ブレンド材料でもまとめていますので、ご参考にしていただければと思いますが、ここで期待する効果は下記の4つです。
まず1つ目の効果は、サッチングで剥き出しになってしまった芝の根元の保護です。サッチングを行った芝生は、下半身を覆っていた衣服を剝ぎ取られてたような状態です。可及的速やかに根元に目土を入れて、衣服を着せてあげる必要があります。
特に夏場は、サッチングをした状態のまま放置すると、芝が枯れてしまう原因となります。サッチング後は速やかに目土を入れることを心掛け、目土入れ前に時間が空いてしまう場合は、少々散水しておくと良いでしょう。
2つ目の効果は、古くなって状態の悪くなった床土(芝生が植えられている土)の状態改善です。目土は表面から撒くだけなので、効果は限定的にはなりますが、状況に応じて目土に肥料などを配合してあげれば、土壌の状態が改善され、芝生の更なる成長を促すことが出来ます。
3つ目の効果としては、芝生の葉と葉の間隔を保ち、その間からの新芽の成長を促す効果です。(芝生の密度を向上させることが出来ます。)長年放置してきたスカスカの芝生にもその効果が期待できるでしょう。
最後、4つ目の効果としては、取り損ねたサッチ(枯れた芝生)の分解とその有機肥料化です。効果は目土の配合などにもよりますが、目土に微生物の増殖が期待できるものを配合することで、有機物であるサッチの分解とその有機肥料化が期待できます。
我が家の場合は、微生物の増殖によるサッチの分解を促すために、目土に下記のような「発酵牛ふん」を配合しています。
過度な配合は、芝生の成長も阻害してしまうような気がしていますが、サッチの溜まっている春先の更新作業や、放置芝生に対するの目土入れでは、たっぷり配合してしまって問題はないでしょう。
注意点としては、「目土」は芝の芽と芽の間に入れていく都合上、目の細かいものが適していますが、一般的な「発酵牛ふん」には、写真のような木片などの異物?が含まれているものが多いです。一度ふるいにかけて異物を除去した状態で使用した方がいいでしょう。(この作業が結構大変ですが…)
なお、目土の配合方法は、トロ船などの大きな容器を準備して、市販の目土と混ぜるだけです。ひと手間加えるだけで、独自の目土が出来上がりますので、皆さんのお気に入りの配合を探してみるのも楽しいかもしれませんね。
さて、目土が準備出来たら、芝生に目土を入れていきますが、その方法は、至って簡単です。芝生の間にバランスよく目土を撒いていくだけです。芝生愛好者さん達の中には、自動で目土を撒けるような治具などを自作している方もいらっしゃいますが、私の目土入れは常に”手入れ”ですね。
なお、目土入れには、芝生の表面に出来る凸凹(不陸)の修正効果もあります。写真のような”手入れ”であれば、手のひらで不陸の状態を確認しながら目土を入れていくことが出来ますので、手のひらで凹みを検出出来たら、そこに多めに目土を入れるなどすることで、凸凹(不陸)を綺麗に修正することが出来ます。(手の平センサーは非常に優秀です)
目土入れのデメリットというか、少し注意が必要な点としては、目土を重ねて入れていくことで、芝生の高さ(レベル)が次第に上がってしまうことです。
芝生の高さが上がると、芝生表面の排水性が向上する効果が見込めるので、高さが上がることが一概に悪いことではありませんが、上写真のように、レンガを敷き詰めた部分との段差など、お庭の全体的のバランスが崩れてしまうこともあるので、その点は少し考慮が必要ですね。
芝生全体に目土を入れて、散水して仕上げれば、「春の更新作業」は完了です。
6.芝生の「春の更新作業」の重要性
今回は葉が伸びたままで冬越しさせた芝生の「春の更新作業」の内容をまとめました。
作業が完了した状態は写真のとおりです。芝生の表面が目土に覆われて、かなり”黒っぽい”状態ですが、これからの気温上昇とともに芝の新芽がたくさん出てきて、5月後半ごろまでには、青々とした芝生に育ってくれるでしょう。
なお、今までの芝生育成の経験から考えると、感覚的には、この「春の更新作業」をしっかり実施しておけば、あとは定期的な”芝刈り”を実施するだけで、芝生はある程度育ってくれます。逆に言えば、この更新作業さえしっかり実施しておけば、あとはそれほど手を加えなくても元気に育ってくれるというくらい、この「春の更新作業」は重要な作業です。(私見ですけど)
長年放置してきた芝生では、芝生が植えられている床土の劣化が激しいと思われますので、この作業を1回実施しただけでは完全な回復は見込めませんが、一連の作業を1度でも実施しておく効果はかなり大きいはずです。放置している芝生があれば、騙されたと思って、是非1度試してみてください!(ただし、かなりの重労働なので、ある程度の熱量がないと頑張れないかもしれませんww)