一般的な家庭用の電源コンセントは出力電圧が単相100Vとなっていますが、エアコンなどの一部の家電製品では、単相200V仕様で設計されているため、事前にコンセントの出力電圧を200Vに切り替えた上で使用する必要があります。そこで今回は、パナソニック製分電盤”コスモシリーズ”の出力電圧を単相100Vから単相200Vに切り替える方法を紹介します。電気工事士の資格が必要な施工となりますが、家庭用電源が200Vに出来る原理などもまとめています。下記リンクの動画でも施工内容を紹介していますので、ご参考にしてみてください。【DIY】#46 単相200V電源を新設する電気工事-分電盤に200Vの専用ブレーカーを新設して、芯線Φ2.0mmの新たな電源ケーブルを配線する
1.消費電力が大きい電化製品は単相200Vで稼働する
日本では、ほとんどの電化製品が単相100Vで稼働しますが、エアコンなどの消費電力の大きい一部の電化製品では単相200Vが使用される設計になっています。
エアコンで言うと、適用畳数が14畳を超えると200V機種に切り替わってくる印象ですね。(16畳以上はほぼ200V機種です)
機器の消費電力が大きくなると、なぜ200Vが使用されるのか?ですが、消費電力が1000Wとなる機種で考えた場合に、それぞれの電圧で必要となる電流は下記になります。
- 100V:1,000W=100V×10A
- 200V:1,000W=200V×5A
消費電力1,000Wの電気機器を稼働させる場合、100V電源では10Aの電流を必要としますが、200V電源では5Aしか必要としません。電圧が2倍になることで、必要な電流を1/2にすることが出来るということですね。
必要な電流が小さくなるとどんなメリットがあるか?ですが、一般液な家庭用の電源では、分電盤の1つの安全ブレーカー(写真右側の小さなブレーカー)に流せる電流がMAX20Aに設定されている場合が多いです。(漏電ブレーカーと安全ブレーカーの仕様で決まる数値です。)
そして、各安全ブレーカーに接続されている電源ケーブルが芯線Φ1.6mmであればケーブルに流せる電流はMAX15Aとなり、芯線Φ2.0mmであればMAX20Aまでとなります。
よって、電圧が100Vの場合、芯線Φ1.6mmの電源ケーブル使用時に動かせる機器はMAX1,500W(=100V×15A)まで、芯線Φ2.0mmの電源ケーブルでもMAX2,000W(=100V×20A)までの機器しか動かせない計算になります。
一方、電圧200Vでは、電源ケーブルの芯線がΦ1.6mmの場合ではMAX3,000W(=200V×15A)の機器を動かすことが出来、芯線Φ2.0mmでは、MAX4,000W(=200V×20A)の機器まで動かすことが出来ます。
ハード的な要因で流せる電流に制限がある家庭用電源では、より低い電流で消費電力の大きな機器を稼働させることが出来る200V電源の方が、消費電力が大きくなればなるほど有利になってくるということですね。
2.電圧を単相200Vへ切り替える電気工事
消費電力が大きな家電製品に使用される単相200V。一般的なコンセントは単相100Vで設定されているため、単相200Vを使用するためには事前に適切な電気工事を行う必要がありますが、200V化の電気工事を行う際には、まず電柱から各家庭に引き込まれている電気がどのようになっているか?が重要になります。
写真は各電源ケーブルの接続部が見えるようカバーを外した状態の分電盤ですが、分電盤左側の主幹(メイン)ブレーカーの上側には、電柱から引き込まれた3本のケーブルが接続されており、それぞれのケーブルには左から「赤」「白」「黒」のラインがあることが確認出来ます。(そして、その下側には同じ並びで「赤」「白」「黒」3本のケーブルが接続されています。)
まずは、この主幹ブレーカーに「赤」「白」「黒」3本のケーブルが接続されているのが重要です。3本が接続されていれば、分電盤まで単相200Vの電気が引き込まれていることになりますので、屋内の電気工事のみで各コンセントの単相200V化が可能となります。
しかしながら、主幹ブレーカーに「黒」「白」2本の線しかつながっていない場合は、電柱から家に100Vの電気しか引き込まれていない状態になりますので、電柱から家に引き込まれる電気を200Vに変える工事を施工する必要があります。DIYで施工するにはかなり難易度が高い電気工事になりますね。。。
なお、3本のケーブルが接続されていれば、なぜ200Vの電気が使用できるようになるのか?の原理(イメージ)は下記のとおりです。
電線から引き込む3本のケーブルのうち「白」は中性線「0V」になっています。そして、「黒」「赤」は、それぞれが「+100V」「-100V」です。(交流なので、位相が逆になって、電位差が200Vになるという意味です。)
電気を100Vのみで使用する場合は、「黒」と「白」に接続して、電位差100Vで使用します。一方、200Vで使用する場合は、「黒」と「赤」に接続して、電位差200Vで使用するイメージです。
よって、200V化電気工事の具体的な施工内容は、分電盤の安全ブレーカーの接続を、電位差100Vの「黒」と「白」から、電位差200Vの「黒」と「赤」に変える工事になります。(原理的にはとてもシンプルですね)
ただし、使用している安全ブレーカーによって、主幹ブレーカーを落とさなくても簡単に切り替えられるもの、主幹ブレーカーを落とした上で部品を組み替える必要があるもの、100Vにしか対応していないものなどなど、仕様がバラバラです。施工は分電盤、及び安全ブレーカーの仕様をしっかり確認して施工する必要があります。
3.Panasonic製分電盤 コスモパネルの200V化工事
家庭用電源の単相200V切り替え工事の内容は、分電盤に使用されている安全ブレーカーの仕様によって異なりますが、今回はPanasonic製の分電盤”コスモパネル”(写真参照)に使用される”コンパクトブレーカー”の200V化工事を紹介します。
まず、パナソニック製の安全ブレーカー”コンパクトブレーカー”シリーズには、100Vでしか使用できない製品と、200Vに切り替えが出来る製品があります。200V化の電気工事を施工する場合には、200Vに切り替えることが可能なコンパクトブレーカーを準備する必要があります。
また、安全ブレーカーには流せるMAX電流が決められていますので、200Vで使用したい電気機器の消費電力(消費電流)を確認して、それにあったものを使用する必要があります。例えば「20A」の電流を必要とする電気機器の場合は、下記の製品などを購入します。(その他、15A・30Aの製品がラインナップされています)
上記のコンパクトブレーカーは、100Vでも使用できて、200Vに切り替えが出来る商品です。デフォルトでは、100Vで使用する設定で納品されますので、まずはそれを200Vの設定に切り替える必要があります。
200Vの設定に切り替える方法はとても簡単です。コンパクトブレーカー前面上部の丸いボタンを、写真のようにドライバーなどの細いもので押して、ボタンの後ろにある端子を後ろにズラすだけです。
結果、100Vで使用する場合には、3つの溝の両端(写真の左側と右側)に端子が配置される状態となりますが、200Vで使用する場合は、端子の位置が左側と真ん中に配置される状態になります。
分電盤にセットした時に、100V設定では「白」と「黒」に相当する端子に接続し、200Vでは「赤」と「黒」に相当する端子に接続されるように端子位置を切り替えるということですね。
その辺りは、写真のように安全ブレーカーにも明記されています。「N-L」の位置で端子を使用するのが100Vで、「L-L」の位置で端子を使用するのが200Vです。不安な場合は、表記も見て確認しましょう。
また、200Vに切り替えたものを100Vに戻すのも、安全レバーの切り替えスイッチをスライドさせるだけで簡単にできます。この辺の設計は流石パナソニックさんですね!
続いて、200V設定に切り替えた安全ブレーカーを分電盤に接続していきます。分電盤に空きがあって、200Vの電源を新設する場合は、分電盤に装着されていたダミーパーツを外して安全ブレーカーを取り付けます。分電盤に空きがなく、既設の安全ブレーカーと入れ替える場合は、既設の100Vのコンパクトブレーカーを外して付け替えます。
分電盤への安全ブレーカーの接続は簡単です。分電盤の出っ張りとコンパクトブレーカー側面の溝を合わせて嵌め込み、中心方向(写真の矢印方向)にスライドさせて固定するだけです。(固定する時は、安全ブレーカーのスイッチはOFFにしておきましょう)
また、所定に位置までしっかりスライド出来ていれば、中央部の金属板(黒色)が安全ブレーカーの突起に引っかかってロックされますので、ロックがしっかりかかったことを確認しておきます。(安全ブレーカーを外す時は金属板のロックを外してスライドさせます)
分電盤に200Vの安全ブレーカーが取り付け出来たら、VVFケーブルを接続していきます。(前述のとおり、20Aでは必ず芯線Φ2.0mmを使用し、15Aまでなら芯線Φ1.6mmでもOKです。)
VVFケーブルの接続も簡単です。安全ブレーカーに表示されたストリップゲージに従って、VVFストリッパーなどでケーブルの芯線被覆を剥いて、剥き出しにした芯線を端子の奥まで挿しこむだけです。
芯線が奥まで挿し込めていれば、安全ブレーカーのチェックゲージ(写真矢印部)がスライドしてオレンジに変わりますので、ゲージがオレンジになることをしっかり確認しましょう。(ケーブル接続を外したい時はチェックゲージを反対側にスライドさせれば簡単に外せます。)
最後に取り付けた200Vの安全ブレーカーをOnにして、接続した電源ケーブルに200Vの電圧がかかっていることが確認出来れば、分電盤の200V化工事は完了です。(部品さえ用意してしまえば施工はいたって簡単です。)
4.コンセントを200V仕様に変更する
分電盤側の工事が完了すればコンセントまで200Vの電気が導通するようになりますが、200V対応の電気機器では、誤って100Vの電源に接続されないようにプラグの形状が100Vとは異なっています。よって、200Vの機器を動作させるためには、コンセント機器も200V対応のものに変更する必要があります。
日本における単相100V、単相200Vでのプラグ形状は図のとおりです。(上段が100V、下段が200Vです)
同じ200Vでも、流れる電流(MAX15A or MAX20A)で使用するコンセント機器が異なるということですね。
また、前述のとおり、分電盤から引き回すVVFケーブルの芯線の太さで、ケーブルに流せる最大電流値が変わりますので、その辺りもしっかり考慮してコンセント機器を選定する必要があります。
使用されているVVFケーブルの芯線がΦ1.6mmなのであれば、必ず15A仕様のコンセント機器を使用し、芯線がΦ2.0mmであれば、15A・20Aどちらのコンセント機器も使用できるということになります。
なので、既設のVVFケーブルが芯線Φ1.6mmで、使用したい電気機器が20Aの場合は…残念ながら、芯線Φ2.0mmのVVFケーブルを新たに引き回す必要があります。ケーブルを引き回すのはとても大変なので、200Vの電気機器を購入する際には、既設のVVFケーブルの芯線太さをしっかり確認しておいた方がよいでしょう。(新築時の電気工事に使用するVVFケーブルは、すべて芯線Φ2.0mmにしておいてくれていればよいのに…なんて思いますけどー)
コンセント部分の分解方法は壁面設置コンセント・スイッチの分解(組込み)、ケーブルの接続方法は電気機器の連用取付枠への固定とケーブル接続で確認していただければと思いますが、200V・15Aで使用したい場合には、下記のようなコンセント機器を準備します。
コンセント機器の裏面に電源ケーブルを接続して、コンセント周りを元通りに戻せば、すべての施工は完了です。(本当に200Vになっているか?はテスターでしっかり測定しておきましょう。)
200V化の電気工事で設備屋さんがおいくらを請求するのか?はわかりませんが、VVFケーブルを新たに引き回す必要がなければ、その施工はいたって簡単です。電気工事士の資格が必要な施工にはなりますが、資格がある方は是非DIYでトライしてみましょう!(後日、カワムラ製分電盤の200V化工事についても記事にして紹介する予定です)